感情労働者の夜明け『千のグラスを満たすには』

メンタルが強い人に憧れて、有名な女性の自伝・評伝を読み漁ってきました。
とある感情労働者のブログ*にたどり着いたのは十数年前のこと。笑顔を作り、怒りをこらえ、理不尽を受け止め続けるお仕事日記を、気づくと一気読みしていました。

感情労働とは、自分の感情をコントロールして相手の感情に働きかける仕事のこと。
代表的な職種は接客、医療、介護、営業。
その中でもキャバ嬢、キャバクラで働くキャストさんは独特の苦労がお有りなのだと、そのブログを読んで知りました。

仕事の場は酒席、相手は酔ったお客さん、接客しながら自分も呑んで呑まされて。感情は酔うと増幅するもの。
相当頑張ってコントロールできたとしても、それはそれでまた。
感情労働は習慣化してしまうと、休日になっても心身をオフできなくなることがあるそうです(→Wikipedia)。そういう闇をいったいどうやって切り抜けるのかと。

地道な努力と自己管理、そして根性。さまざまなキャストさんのブログを読んで読み続けて分かりました。
キラキラでギラギラな夜の世界も、働く上での気持ちは昼の世界と同じ。
それが単行本『千のグラスを満たすには』(新潮社|紹介ページ)のテーマです。

舞台は『キャバクラの台所』と同じ、日本最大の歓楽街にある高級キャバクラ・ジュビリー。
キャバクラのキャスト、そしてスタッフ——店長や黒服、送迎ドライバーや美容師——がそれぞれの夜明けを迎えるまでを描いています。

『キャバクラの台所』で起きた事件の犯人も、さりげなく明かされております。『キッチン・ブルー』文庫版で話の順序を入れ替えたのは、今作のためでした。

師走が近づいて慌ただしくなっていくこの時期、お疲れの方も多いかと。
キャバクラ・ジュビリーでパーッと気分転換、そして元気になっていただければ何よりです。

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装丁の絵はイラストレーターの梅林佳奈さんが描いてくださいました。
気品と可愛らしさ、強かさと不安、プライドと欲。話中に登場する女子たちのさまざまな面を感じ取れる、素敵な絵にしていただいて感謝しております。
彼女を書店で見かけたら、ぜひご指名を宜しくお願いいたします!

週刊女性にインタビュー記事が掲載されました → 週刊女性プライム

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『キッチン・ブルー』単行本刊行の記事にも書きましたが、キャバクラの舞台裏を描くきっかけになったのは、脚本家時代にロケ先で撮った十数枚の写真。
まさか短編一本+単行本丸一冊を書くことになるとは。無駄にしねえな(by照月@『バー極楽』)

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キャバ嬢の借金返済日記
 お母さんの借金を肩代わりするためにキャバ嬢になった女の子のブログです。今は幸せに暮らしていらっしゃいますように。