冷蔵庫探偵・2巻あとがき

雑誌で「冷蔵庫探偵」を読んでくださっている方への御礼に。
そして、2巻・6話掲載のときに起きた、
東日本大震災に寄せて。

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[2巻あとがき]

人に会えば「冷蔵庫を見せて」。
食事に行けば厨房の、料理を習う時は教室の、打ち合わせ先ではオフィスのーー。
冷蔵庫のことを、連載を始めてからは何時でも何処でも意識してきました。
世界でただ一つ、自分の冷蔵庫以外は。

普通に梅干し、味噌。プラカゴにたまった使い残しの調味料の小袋。
10日に一度つくる豆乳ヨーグルトの大きな容器。自作のローズマリーの化粧水。亜麻仁油。水出しのカミツレ茶。*
自分の冷蔵庫なんて中も外も知り尽くしているし、それ以前に空気。
そこにあるのが当たり前で、だからめったに意識することもなく。

当たり前でなくなったのは、2011.3.11。

停電の不安。周囲の店の棚から、食料品や飲みものが消えていった時の不安。
常に冷蔵庫を意識する日々の中で痛感しました。
冷蔵庫を開ければ明かりがみえ、食べもの飲みものが待っている。
そんな、当たり前だと思っていたことが、どれだけ幸せなことだったかを。

「今回の震災で漫画に求められるのは、今まで以上に『癒し』だと思います」

震災直後、担当の渡邊さんからいただいた言葉です。
「冷蔵庫探偵」2巻も、ささやかでも『癒し』になればと願っています。
読んでくださった皆さま、ありがとうございました。

そして、東日本大震災の被災者の方々に、謹んでお見舞い申し上げます。
一日も早い復興を心よりお祈りしています。

遠藤 彩見
https://endosaemi.com/

*レイコ「老化対策を意識しまくりね。分かるのよ、冷蔵庫を見ればね」