私は食物アレルギー持ちで「一部食えない女」です。
短編『食えない女』にこれでもかと詰め込んだ「食えない」怨念は、ほぼ実体験。自分の誕生会で、酔った一人から「なぜ」「おかしい」「食べられないわけがない」と詰められて涙目になったこともあります。*
今は食物アレルギーに対する認知度が上がり、アレルギーだと言えば大体の人が納得してくれるので助かります。誤解やお叱りを適当に受け流したり逃げたりもできるようになりました。
それでも、勧められた食べものを断るときのいたたまれなさだけは、どうすることもできずにいます。
会食不全症候群の他にも、味覚障害、料理下手、孤食など、食をめぐる憂うつをテーマにした短編連作集『キッチン・ブルー』(2015年11月刊行)が文庫化されました。
おいしい、まずい、お腹すいた、お腹いっぱい、食べたい、食べたくない……
自分の味覚や食欲、腹具合、そして気分は自分にしか分かりません。
食べることは、本当はとても孤独なことではないかと思います。
『キッチン・ブルー』単行本の刊行時にPOPに書かせていただいた文章です。
人によっては取るに足らない、あるいは面倒くさいと片付けられてしまいそうな食の憂うつ、食への感情を綴ったこの本が多くの人に読まれ、誰かの「キッチン・ブルー」が和らげば……と願っています。
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担当のHさんが「“映え”るものにします!」と力強く仰った文庫版のカバー絵は、マキヒロチさん(「いつかティファニーで朝食を」)が描いてくださいました!
そして、
乾ルカさんが解説を書いてくださいました!
乾さんご自身の切ないエピソードも明かしていただき、読ませていただいたときに涙が出ました。
鋭く、温かく。もう、本文より読んでいただきたいくらい素晴らしい、そして有り難い解説です。
なんだか他力本願といった感じになっておりますが……
肝心の中身は、訳あって単行本のときと話順を変えまして、それに伴って大幅に加筆訂正をしております。
文庫版で最終話となった「キャバクラの台所」のラストに、書けばよかった、とずっと後悔していた三行を加筆することができました。
機会をいただけて本当に嬉しかったです。
『キッチン・ブルー』文庫版、ご一読いただければ幸いです。
よろしくお願いします!
*私も酔っていたの