食をめぐる六つの憂うつ『キッチン・ブルー』

「鮭の皮って、食べます?」

この問いを発したのは、担当の編集者さん二人のどちらかだったか、それとも私だったか。
二年前の今ごろ、新宿の名曲喫茶にて。
“食欲”をテーマにした短編小説の打ち合わせでした。

「親しい人の前なら食べちゃう」
「かしこまった席なら残すかも」
「でも心残りかも」

なんてことを話しているうちに、いつしか話題は、
「食にまつわる面倒くささ」へと。
人目が気になる、気を遣う、同調圧力、後悔、我慢ーー。

「食べない自由って、あると思うんですけど」

編集者さんの言葉を今でも覚えています。

「私、ケータイが無かったら、ご飯作れるかな、って」

単行本の担当になって下さった編集者さんからは、
“作る憂鬱”のエピソードを戴いて。

私は食物アレルギー持ちで、食の面倒は当たり前だけれど、
そうでなくとも、食にまつわる憂鬱を感じたり、抱えたりしている人は
多いということを、改めて感じました。

『キッチン・ブルー』のテーマ、“食のコンプレックス”は、
そこから生まれたのだと思います。

雑誌「波」で倉本さおりさんから書評を戴きました。
→ (新潮社|紹介ページ
あのシーンが泣けたとは意外。でも嬉しいです!

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鮭の皮、私は好きです。
水戸黄門も鮭の皮が大好物で、厚さ三センチの鮭の皮があったら何十万石の領地と取り替えてやる、と言ったそうですね。伊丹十三さんの「女たちよ!」で読みました。

一番好きな鮭皮の食べ方はチップス状にすること。普通に鮭を焼いてから皮を剥がして、剥いだ面をフライパンで焼くとカリカリになります。ジェイミー・オリヴァーの番組で学びました。

書店の皆さま、アンケートありがとうございました